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子宮内膜ポリープを知ろう
本コンテンツでは、特に子宮内膜ポリープに焦点をあて解説します。
今は短期の入院だけでなく、日帰りや外来で
子宮内膜ポリープを切除することもできます。
子宮内膜ポリープを正しく理解し、
一人で悩まず、医師とともに適切な診断と治療を行いましょう。
子宮内膜ポリープとは?
子宮内膜ポリープは、無症状であることが多いため見過ごされがちですが、放置すると不正出血や不妊症の原因となる可能性があります。
基本的には良性の腫瘍ですが、ごく稀な頻度で摘出したポリープが最終的に悪性と診断されることもあります。
子宮にできるポリープ
子宮にできるポリープの種類
子宮にできるポリープは、子宮内膜ポリープと子宮頸管ポリープに分かれます。それぞれの発生場所や特性に違いがあります。
子宮内膜ポリープは、内膜(子宮体部の内側を覆う膜)から発生します。一方、子宮頸管ポリープは、子宮頸管(子宮の入口にあたる部分)に生じます。
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子宮内膜ポリープとは?
子宮内膜ポリープとは、子宮内膜(子宮体部の内側を覆う膜)に発生する良性の腫瘍です。これは子宮内膜の一部が異常に増殖し、ポリープ状の突起物を形成する状態を指します。
子宮内膜ポリープは、1つだけできることもあれば複数同時に生じることもあり、その大きさや形状、子宮内膜ポリープによって生じる症状はさまざまです。
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子宮内膜ポリープの種類
子宮内膜ポリープにはいくつかの種類があります。以下に主な種類を挙げます。
- 単発性ポリープ
- 1つのポリープが形成されるタイプ
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- 多発性ポリープ
- 複数のポリープが形成されるタイプ
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- 腺腫性ポリープ
- 腺組織が異常に増殖するタイプ
- 腺筋性ポリープ
- 腺組織と筋組織が混在するタイプ
これらのポリープは、通常は良性ですが、まれに悪性化することもあるため、適切な診断と治療が重要です。
子宮内膜ポリープは、月経(生理)異常、不妊症、異常出血などの症状を引き起こすことがあり、特に妊娠を希望する女性にとっては重要な問題となります。診断には超音波検査や子宮鏡検査が用いられ、治療にはポリープの切除が一般的です。
子宮内膜ポリープの症状
子宮内膜ポリープは、子宮内膜に発生する主に良性の腫瘍であり、さまざまな症状を引き起こすことがあります。
以下に、一般的な症状と無症状の場合について詳しく説明します。
不正出血
子宮内膜ポリープの最も一般的な症状の一つは、不正出血です。これは月経周期に関係なく発生する出血であり、特に月経以外の時期に出血が見られたり、月経が長く続いたりします。
過多月経
子宮内膜ポリープが原因で月経の量が通常よりも多くなることがあります。ポリープの増大に伴い月経量も増えてくる場合があります。
不妊
子宮内膜ポリープは、受精卵の着床を妨げることがあり、不妊症の原因となることがあります。
無症状の場合
一方で、子宮内膜ポリープは、無症状であることも少なくありません。多くの女性は、定期的な婦人科検診や他の理由で行われた超音波検査などで偶然に発見されることがあります。無症状の場合でも、ポリープが存在することで将来的に不正出血や不妊のリスクが高まる可能性があったり子宮内膜に生じる子宮内膜がんとの鑑別が必要なため、医師の診断と適切な管理が重要です。
子宮内膜ポリープの症状は個人差があり、すべての女性が同じ症状を経験するわけではありません。
症状がある場合は、早期に医師の診察を受けることが推奨されます。
子宮内膜ポリープと妊娠・不妊治療
子宮内膜ポリープは、子宮内膜に発生する良性の腫瘍であり、女性の生殖健康に影響を与えることがあります。
特に妊娠や不妊に関する問題において、その影響は無視できません。
妊娠への影響
子宮内膜ポリープは、子宮内膜の正常な機能を妨げることがあります。ポリープが存在することで、受精卵が子宮内膜に着床しにくくなる可能性があります。
また、ポリープが大きい場合や多数存在する場合、子宮内の環境が変化し、妊娠の維持が困難になることもあります。
不妊治療との関連
不妊治療を受ける女性にとって、子宮内膜ポリープの存在は重要な要素となります。ポリープが不妊の原因と考えられる場合、まずはポリープの除去が推奨されます。
ポリープの除去手術(ポリペクトミー)は、比較的小さな手術であり、術後の回復も早いです。ポリープを除去することで、子宮内膜の環境が改善され、妊娠の成功率が向上することが期待されます。
また、体外受精(IVF)などの高度な不妊治療を行う前に、子宮内膜ポリープの有無を確認することが重要です。
ポリープが存在する場合、胚移植の効果が減少する可能性があるため、事前に適切な処置を行うことが推奨されます。総じて、子宮内膜ポリープは妊娠や不妊に対して重要な影響を及ぼす可能性があるため、早期の診断と適切な治療が求められます。専門医の指導のもと、適切な検査と治療を受けることが、妊娠を実現するための第一歩となります。
子宮内膜ポリープの原因
子宮内膜ポリープの原因は多岐にわたりますが、主にホルモンの影響とその他の要因に分けられます。
ホルモンの影響
子宮内膜ポリープの形成にはエストロゲンという女性ホルモンが大きく関与しています。エストロゲンは子宮内膜の成長を促進する役割を持っており、過剰なエストロゲンが子宮内膜の異常な増殖を引き起こすことがあります。
特に、閉経前後の女性やホルモン補充療法を受けている女性は、エストロゲンのバランスが崩れやすく、ポリープが形成されやすいとされています。
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その他の要因
ホルモンの影響以外にも、子宮内膜ポリープの形成にはいくつかの要因が関与しています。
年齢
子宮内膜ポリープは40歳以上の女性に多く見られます。年齢とともにホルモンバランスが変化し、ポリープのリスクが高まるとされています。
肥満
体脂肪が多いとエストロゲンの生成が増加し、子宮内膜の過剰な増殖を引き起こす可能性があります。
高血圧
高血圧も子宮内膜ポリープのリスクを高める要因の一つとされています。
遺伝的要因
家族に子宮内膜ポリープや他の子宮内膜疾患の既往がある場合、リスクが高まることがあります。
その他の疾患
子宮筋腫や子宮内膜症など、他の子宮内膜関連の疾患がある場合も、ポリープのリスクが高まることがあります。
お薬
乳がんの治療に用いるタモキシフェンというお薬を内服している場合、子宮内膜ポリープが生じやすくなります。
これらの要因が複合的に作用し、子宮内膜ポリープの形成を促進することが多いです。
ポリープの原因を正確に特定することは難しいですが、これらのリスク要因を理解することで、予防や早期発見に役立てることができます。
子宮内膜ポリープの診断方法
子宮内膜ポリープの診断には、以下の3つの主要な方法があります。それぞれの方法について詳しく説明します。
01 超音波検査
超音波検査は、子宮内膜ポリープの診断において最も一般的に使用される方法です。経腟超音波検査を行うことで、子宮内膜の厚さや異常な構造を確認することができます。特に、経腟超音波は高解像度の画像を提供し、ポリープの存在や大きさ、位置を詳細に把握するのに役立ちます。
超音波検査は婦人科の診察室で簡便にできて、患者様にとっても負担が少ないため、初期診断に適しています。
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02 子宮鏡検査
子宮鏡検査は、子宮内膜ポリープの診断と同時に治療も行える方法です。子宮鏡を用いて直接子宮内を観察し、ポリープの有無を確認します。この方法は、ポリープの形状や大きさ、数を正確に把握するのに非常に有効です。また、子宮鏡を用いてポリープを切除することも可能であり、診断と治療を一度に行うことができます。
子宮鏡検査は、超音波検査で異常が見つかった場合や、症状が持続する場合に推奨されます。
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03 組織検査(生検)
組織検査(生検)は、子宮内膜ポリープの確定診断を行うための方法です。子宮内膜の一部を採取し、病理学的に検査することで、ポリープが良性か悪性かを判断します。生検は、子宮鏡を用いて行うことが一般的であり、正確な診断を下すために不可欠な手法です。また子宮内膜ポリープを切除することで、切除したポリープについて組織診断し、良性か悪性かの最終診断をつけることが可能です。
特に、ポリープが大きい場合や、異常な出血が続く場合には、組織検査が推奨されます。
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これらの診断方法を組み合わせることで、子宮内膜ポリープの正確な診断が可能となります。患者様の症状や医師の判断に基づいて、最適な診断方法が選択されます。
小芝 明美 先生京都市立病院 産婦人科 部長
- 日本産科婦人科学会産婦人科指導医
- 母体保護法指定医
- 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(子宮鏡)
- 日本女性医学学会女性ヘルスケア指導医
- 京都府立医科大学臨床教授京都府立医科大学客員講師
- 日本子宮鏡研究会幹事長